矢作芳人厩舎(栗東)
私立小学校から開成中学、高校とエリート路線を歩んで来た矢作芳人調教師。父親が南関東大井の調教師であった事からこの世界に身をおく事となりましたが、やはりキャリアが示す通り、理詰めの調教、そして出走が目に付きます。
「厩舎の所属馬を可能な限り多く出走させる」といった理論を持ち、2019年度の出走は524に上るが主要厩舎の中では勝率(.103)、連対率(.198)、複勝率(.279)ともに最低の数字で勝負と出走だけが大きく分かれるのも特徴。その勝負だけ抜粋出来れば同厩舎で常勝も当然可能となります。
ダービートレーナー、リーディングトレーナーの称号を得るなど名伯楽と言っていい同師ですが、そのパターンは様々。一定のパターンを儲ける事がなく“その馬にとっての最良の調教"これこそが躍進の鍵となっているようです。
ただしその中でもやはり勝負懸かりの調教があるのは事実。ここでは代表管理馬2頭のディープブリランテ、グランプリボスを取り上げ【鉄板調教】を紐解いて参ります。
ディープブリランテに関しては新馬、東京スポーツ杯2歳ステークスと連勝しましたが、3歳シーズンはダービー前まで共同通信杯3着、スプリングステークス2着、皐月賞3着といずれも惜敗。皐月賞後は放牧に出されレース25日前の5月2日に帰厩します。翌日から馬場入りを始めましたが、本格的な時計を出し始めたのは11日。その後は16日と20日にCW、23日に坂路で時計を出しますが1週前(16日)の調教は栗東CW81.5-65.7-51.0-37.7-12.2(一杯)その後日曜の追い切りでは珍しく再度(20日)CWで75.1-59.3-12.9。1週前には3馬身後方から併入し、最後は7馬身先着と文字にすると順調も最後は手前を変えるなど不安の残る内容。そこで20日に再度CW入りし、最終追い切りは坂路で51.4-37.5-計時不能-12.0(強め)鞍上はステッキこそ抜いたものの手綱をしごいただけで最後は寮馬を3馬身置き去りとまさに万全の仕上げ。馬場入り直後を差し引いても早いタイムで調子の良さは明らかでした。
またグランプリボスはNHKマイルCは1週前追い切りはDPで80秒前後、直前の追い切りでは栗東坂路で4F52.1-計時不能-25.3-12.9(強め)という追い切り。時計的には物足りないが、それでも1週前で同厩のヘニーハウンド(同レース12着)に先着しているように調子は上向き。
両馬の調整過程を見ても1週前に仕上げ、足りない分を補うのが矢作流。2週連続で一杯の追い切りや逆に足りない馬に関しては何らかの不安点があると思ってほぼ間違いないでしょう。
またジョッキーが調教に跨るのは勝負気配を測る一つの基準。騎乗予定のジョッキーが調教をつけていたら勝っても損はなさそうです。
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